I Am Malala 英語版を読み終えた。(最初に日本語版で読んで、次に英語版で読んだ)

 

    今回、感じたことは「私たちは恵まれている」ということ。

  「人権なんて本当には存在しないのだ」と、著書SapienceでYuval Noah Harariさんは言っていたけれど、パキスタンの人たちに比べれば、私たちはずっといい。爆撃や襲撃、公開処刑や暗殺に怯えながら暮らさなくていいのだから。彼らは「平和に暮らす」というもっとも基本的な人権が奪われている。(現在ではウクライナの人々が、ロシアの侵攻により、そのような目に遭っている)

 

   ロンドンに移住してからマララは「夜は出歩かない方がいい」と言われたけれど、それを聞いて笑える、と。だって、彼女がいたスワットでは、いつタリバンが襲ってくるかわからない状態だったから。みんなが交通ルールを守っているところも、感心していた。

 

   2012年10月9日、彼女はスクールバスの中に乗り込んできたタリバンに銃撃された。Who is Malala? と問う銃撃実行犯に答えてI am Malala. と彼女は答えたかったが、その前に撃たれた。

   襲撃直後に治療に当たったパキスタン医師の勇断や、その後、偶然パキスタンにいたイギリス人女医の尽力、その他医学界のみならず政治界、財界の著名人、さまざまな人たちの連携で、マララは命をとりとめたのみならず、目が見えて、耳が聞こえて、半身不随を免れ、笑顔を取り戻した。一時は顔の左反面が垂れ下がり、笑顔を作れない状態だった。

   

    世界中の人が彼女を応援している一方で、自国パキスタン人の中には彼女と彼女の家族の悪口を言う人たちもいるそうだ。自由で豊かな国へ彼女らが移住することができたから…。しかし、彼女たちは、本当は故郷に帰りたいのだ。彼女が住んでいたスワットという地域はパキスタンのスイスと呼ばれ観光地やスキー場として栄えた風光明媚な場所だ。

スワット渓谷 Swat valley in Pakistan

   彼女たちが愛する美しい故郷に帰れない(本を書いていた時点2013年で)理由は、タリバンパキスタン国内に横行しており、彼女と彼女の家族は命を狙われる危険があるからだ。パキスタン軍がタリバンをこの地域から一掃して平和は守られているというが、彼女や彼女の父親のように、自由や人権を求めて発言する人たちは、個人的にいつ、どこで狙われるか分からない。この本の中で彼女はパキスタン政府の批判もしている。ブット首相を襲撃した犯人もまだ捕まっていないのだ。

 

   彼女らが襲撃されるのは、イスラム教を軽視し西洋思想を広めようとしているからだとタリバンは主張する。

   しかしマララとその家族は敬虔なイスラム教徒である。熱心に神に祈りを捧げる。タリバンの「暴力・殺人・人権を奪う行為・女性が男性に従うべきという考え」などは全くコーランには書いていないと言う。ピストルを人の頭に当てて「イスラム教徒になれ」と命令するのは間違っている、イスラム教徒を増やしたければ自ら平和を愛するイスラム教徒になって手本を示してその信者を増やすべきだ、とマララは言う。

    彼女の母親が熱心に祈りを捧げる様子は、やはりその大元がキリスト教と同一なのだと、私には思われる。私は神に祈りを捧げない仏教徒だ。

   

    男女が分かれて行動するというアジアの習慣は、30年以上前にインドに行った時も強く感じ、私たち日本人もアジアの一員なんだと思ったものだけれど、今回もまたそれを感じた。私たち日本人は西洋の影響を強く受けていながらも、やはりまだアジアの一員なんだと感じる。いわゆる先進国でありながら、女性の地位がとても低いのも、そのせいだろうか。

 

    日本の識字率が高いのは良いことだ。

    パキスタン識字率は2021年で、59.1%うち男性71.1%、女性46.5%。

    アメリカでかつて奴隷にされていた黒人もそうだったけれど、字が読めないということは、弱い立場に置かれるということだ。権利を奪われてもそれに対抗する力が極端に弱くなる。

 

    人が、人を支配したいという欲求は、強い。

    そのために、支配したい相手に教育を与えない。

    相手が高度な知識を持とうとするとそれを阻止したがる。

 

    自分の支配欲を抑えることの出来る人の割合がどのくらいあるかで、その国が民主主義国家かどうか、その団体が民主的であるかどうかが、決まるのだと思う。

 

    真の意味で民主的(すべての人の人権がきちんと守られている)国や学校、組織、団体、家庭すら、この地球上ではまだ少ない。「進んだ星」からやって来た人々(生物)が、地球人の野蛮さや後進的な実態に驚いているという内容の「美しき緑の星」というフランス映画はなぜか上映禁止されたという。その自主上映が地元福井であったが、観に行くチャンスを逃した。

 

    「私たちは恵まれている」と書いたけれど、それは「比較的」であって「絶対的」ではない。

 

    英語の本と併せてオーディオブック朗読CDも聴いた。朗読している女性がアーチ―・パンジャビーというイギリスの女優だが、彼女のアクセントが、マララ本人ではないかと思わせるようなもので、よかった。調べてみたら父母がインド人で、そのルーツはパキスタンにあったそうだ。

    現在のマララがどんな様子なのか気になってネット検索した。

    英オックスフォード大学卒業後、2021年11月10日に24歳で、パキスタンクリケット協会の幹部を務めるアッセール・マリクさんと結婚した。なお2018年3月29日、銃撃後に初めてパキスタンに帰国した。銃撃後から約6年後だった。

 

#Pakistanパキスタン#タリバン#人権#女性の権利#教育