「夫婦で珈琲」の秘密

100グラム650円のコーヒー豆を買うようになった。

普段は1杯20円ぐらいのドリップコーヒーを飲んでいるが、たまには美味しいコーヒーを、豆から挽いて飲みたい。

そう言って、夫が電動コーヒーミルを買ったのはかなり以前のこと。

やっと、コーヒー豆を買って挽くようになった。

私が、友達に紹介してもらったコーヒー豆販売店で買ってくる。

 

そこで彼と一緒に飲もうと

私が淹れたてのコーヒーを用意して

テラスでゆっくり、

と思っても彼はテレビの画面を見ていることが多く

私はがっかりするやら腹を立てるやらが何回か続いた後

私はいいことを思いついた。

 

こいつはどうせ

コーヒーの味がわからないのだ。

淹れたてのコーヒーをゆったり味わう

という趣がわからないのだ。

 

私がコーヒーを立てているのを傍にいながら

全く見向きもしないのを良いことに

私は二人分を淹れているふりをして

自分だけ650円のコーヒーを淹れて

奴には今までと同じ

彼のまあまあお気に入りの濃いめのドリップバッグコーヒー1杯20円のを淹れてやることにした。

 

「ああ、美味しい」

私は淹れたてのコーヒーを

テラスに揺り椅子を出して飲む。

今日は雨が緑を洗って美しい。

 

彼はテレビ画面を見ながら

お愛想を言う。

「やっぱり豆の香りがいいね」

彼が私の横に座って一緒に飲まなくても

私が不機嫌にならなくなったので

彼もほっとしていることだろう。