夫と映画『黄金の大地』を観に行った。I went to see a movie "Golden Land" with my hubby.

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 映画『黄金の大地』の戸田博監督が福井県の出身で、俳優のひとりが、福井県の映画館『メトロ』の映写技師である山田昭二さん(写真右)ということで、福井新聞に載っていた。

 

 雨降る4月1日の夕方、夫とふたりでバスに乗って、出かけた。

 

 二人の子供たちは中学生。私たちが出かけるのか、出かけないのか、迷っていたとき、黙っていたが、内心は「出かけろ」「出かけろ」と思っていたはず。親が出かけたら、子供だけで自由にしていられるからだ。

 

 福井市の街中にある映画館『メトロ』。

 夫が若いころ、せっせと通ったらしい。その映画館は、地味だけど、良い映画を上映する、いわゆる映画通が行くような、小さな映画館だ。ただでさえ地味な福井の街中に、さらにひっそりと建つ古いビルの中にある。

 

 狭く暗いビルの1階には誰もいなかった。濡れた傘をたたんで、エレベーターに乗って4階に上がると、人がいた。

 3日間上映された、その最終日で平日、しかも雨だったので、観客は少なかったようだ。…そう、戸田監督がおっしゃった。

 上映前に、戸田監督と山田さんが私たち観客の前に立って、挨拶してくれた。

 

 白黒の映画だった。

 地味で静かで、派手なところがひとつもなく…こういうのもいいな、と思っていた。

 

 それもそのはず、後で『モナコ国際映画祭』を調べると、この映画祭は「暴力、セックス描写のない家庭向けの映画のみを対象とする。」とある。

 

 もう1本、カラー作品が続けて上映された。

 同監督、同俳優の『夏の宴』。

 後に観たせいか、それともカラーのためか、こちらの印象が鮮やかに残った。

 日本の昔話みたいな、狐につままれたような現代の話。

 人里離れた山道へ、二人の定年退職したばかりの男が寝袋持参で、車で分け入って行く。

 

 先の『黄金の大地』にも出てきたが、野宿するシーンや、野外で火を焚いて食事をするシーン、昼夜かまわず、人が森や海辺を歩くシーンが多い。

 

 『夏の宴』に出てきたぬかるんだ山道、登山家の夫が「あれは、あそこじゃないかな」と言っていた。滅多に人が入らないような山道らしい。

 帰りに、監督に直接訊いてみたら、と勧めたが、恥ずかしがり屋の夫は「いい」と言って、訊かなかった。

  

 そんな山道の途中にある「そば」という旗を見て、入って行くふたり。

 その山中の蕎麦屋の女たちは、実は狐なのではないかと、思ったが、違った。

 

 この二人の男性、知古の友人らしいが、性格や価値観が違う。それでも、「昔から、お前はそうだったなぁ」と言って、お互いに受け入れている。

 昔、好きだった女の子「お前も好きだったじゃないか」「知っていたのか」という会話。

 「もう帰ろう」と一人が言うと「あと1日いよう」ともう一人が言う。翌日は、違う方が「やっぱりお前の言うように、もう帰ろう」と言う。すると今度は、昨日は「帰ろう」と言っていた方が「いや、もう1日いよう」と言う。

 お互いに影響し合っている。

  

 映写技師であるという山田昭二さん。演技は素人と自ら謙遜していらしたが、なかなか、味のある演技でした。

 

 観に行ってよかったと思った。

 

 私は音楽を聴くのも好きだけど、それも有名なオーケストラとか人気バンドとかじゃなくて、小さな会場で、演奏者の息遣いが聞こえるくらいのコンサートが好きだ。

 この2つの映画は、それに似ている気がした。

 監督と俳優にも会えたし、どこか手作り感のある映画。

 ものすごく緊張したり怖かったりする場面もないし、CGもなし、盛り上がりもとくになし。

 でも、観た後にほっこりするような映画。

 

 もうひとつ、行ってよかった理由は、夫と二人で出かけたこと。

 とても寒い雨の夜だった。

 翌日は、4月だというのに雪が降った。

 そんな夜に二人で映画館を出た後、入った古い店。

 『樽』

 新婚のとき、何度か連れて行ってくれた店だ。

 

 結婚して18年経つ。

 2001年に結婚して、私は福井へ来た。

 

 『樽』のカウンターで、月曜日セットメニューを食べて、飲んだ。

 夕方6時半上映開始から10時近くまで、2本映画を続けて観て、お腹がぺこぺこだった。そのせいだけでもないだろうが、料理もお酒も美味しかった。地元産なのだろうか、豚肉や魚の味がよかった。黒ビールは泡のきめが細かかった。

 

 こういうところに若いころはよくひとりで入ったものだけれど、今晩は夫とふたりで、カウンターにいるお姉さんやバーテンダーに話しかけてもらわなくてもいいのが、いいな、と思った。

 夫は最近ずっと、娘のバスケットボールにかかりっきりで、夫婦で過ごす時間がほとんどない。娘はバスケットボールを小学校3年生の時から中学2年の今まで、続けている。こうして改めて年数を数えてみると、その「最近」というのは、6年間だ。

 

 そんな夫と、久しぶりに出かけて、たわいもない話をして、少しだけ飲んで、タクシーで帰った。

 11時になっていた。

 子供たちはもう寝ていた。

 夕食は勝手に自分たちで用意して食べて、食器も片づけてあった。

 

 夫は先に寝て、私はひとり、風呂に入って体を温めてから、寝た。

 

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