勉強したことを自分に引きつけて考える。 シンクレア・ルイス Sinclair Lewis 『本町通り』Main Street

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シンクレア・ルイス アメリカ文学


 『本町通り』あるいは『メイン・ストリート』Main Street 1920年出版、作者はシンクレア・ルイス Sinclair Lewis1885-1951のあらすじを読んで。 

 

 この本の中身を読んだわけではなく、ただ、こういう作家がこんな作品を書いたんですよ、という知識を得ただけなんですが、それだけでも、何か自分に引きつけて考えることがありまして…。

 

 忘れないうちにここに書いておこうと思いました。

 

 この物語の主人公は、キャロルという若い女性。大学を出てから3年後、12歳くらい年上の医師と結婚、「ゴーファー・プレアリー(プレイリー)」Gopher Prairie という架空の田舎町に住みます。そこで、閉鎖的な町を改革しようと、理想に燃える彼女は奮闘しますが、うまくいきません。一時はそれで、町を離れ、夫とも別居するのですが、最終的には夫の許へ戻ってきます。

 

 そこで、このときのシンクレア・ルイスの視点が、問題です。

 

 田舎町の保守的な、自己満足的な風潮を風刺しているのが、アメリカの人たちにとっては「あるある」で笑えるものらしいのはさておき、この、理想に燃える若きキャロルを、英雄として書くのではなく、批判的に見ているらしく、むしろ、現実と妥協して生きているその夫の穏やかな人柄の方を好意的に書いているそうな。

 

 以上のことはすべて、写真にある『アメリカ小説 入門』井上謙治著、及び『アメリカ文学史 講義2』亀井俊介著から得た知識なのですが、そのルイスの視点について読んだとき、はっとしました。

 

 キャロルの在り方は、若き日の自分だな、と。

 

 私が当時1985年、住んでいたのは東京で、田舎町ではなかったのですが、新卒で従業員100名くらいの会社に就職しました。会社は東京オフィス街のどまん中、丸の内にありました。その会社は、別の大きな大きな会社の「子会社」でした。

  

 当時は『男女雇用機会均等法』元年だったでしょうか、私は新卒採用の女子で一人だけ、ほかの女子とは違う制服を渡され、土日も働いて平日休むという雇用体制で、男性と同じように働く、という条件で採用されました(と、私は思いました)。でも、現実は、そうではなかったんですねぇ。

 社内の制度や考え方を変えようといきり立つ私を、当時の先輩(男性)はこの会社を「親方日の丸」だからと批判しながらも「時期を見て」と私を制しました。

 大先輩の女性(今の私の年齢と同じく50代の)は、「みっちゃん(私のこと)は、妥協という言葉が嫌いかもしれないけど…」と諭そうとしてくれました。

 

 しかし、私は奮闘したあげく、自分の思い通りにいかなくて、3年すると退職して、今度はインドへの旅に出たのでした。

 

 退職したのはもちろん、私の実力不足を筆頭に、適応力のなさとか、今でもそうなんですが、常識のなさとかがあって、必ずしも単純に、私が「理想に燃えた頑張り屋さん」で、会社が保守的だから、だっただけではなかったからなのですが…。

 

 でも、そんなことを、ちょっと思い出させてくれる、本の紹介でした。

 

 そして時代は下って現在、私は福井県福井市という「田舎町」に住んでいます。

 最近では福井は「日本で一番、幸せ度が高い」などという調査結果が出ました。福井に住む人たちの中でもそれは「福井の人の大半がよその土地を知らないからではないか」などという意見も出ていますが…。

 夫は10歳年上。『本町通り』のキャロルの夫のように教養あるお医者様ではないけれど、福井に生まれたときから住んでいる、そこそこ「福井では常識的な、平均的な人」だと思います。

 私は結局、現在はこの夫の許で「庇護」されて生きているのかぁ、と思うと苦笑する次第です。

 

 この福井が田舎町であるのとあまり大差なく、当時の東京のその会社も封建的で保守的だったというのも、面白いです。ほかの会社のことはわかりませんがね。

 

 アメリカと日本の違いを感じました。新しい国と古い国の違いかなぁ、と思いました。アメリカという新しい国の中西部と、古い日本という国の都市部が同じという…。

 

 また逆に、どこの国でも人間というのは同じだなぁ、とも感じました。新しい土地に来て開拓移民として頑張っていたアメリカ人たちも、生活がある程度落ち着くと保守的になる。

 かつての改革派が、自分の生活が安定すると保守的になるなんて、よくある話ですよね。

 

 そんな、いろんなことを感じ、考えるのも、この年になって、趣味的に、こんな通信教育を受けているからです。  

 

 日大通信教育部、文理学部文学専攻(英文学)を取るまで知らなかった作家、そして作品名でした。

 『アメリカ小説入門』というのが、通信教育でのテキストで、亀井俊介氏の『アメリカ文学史』は、日大通信担当教授の北原安治先生が推薦図書のひとつとして挙げられていました。以前も書きましたが、この亀井俊介氏の本は面白いです! 

 

 このことを書こうとしていたら、こんなサイトを見つけました。私よりずっと教養がありそうな人の、もっと知的なサイトですwww.kashiwashobo.sakura.ne.jp/arcana-mundi/miyawaki/article02/118/

 

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