『既成概念を突き崩す』 Break my own stereotype

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2019年5月19日 

 足を開いていて、左右の足は同じ長さだから、体はほぼ真ん中にくるだろうと思う。だが実際、描き始めてみると、違う。自分が座っている位置によって、モデルの足の長さは違って見えるのだ。
 始めにほぼ自動的に描いてしまった線を消して、描き直す。
 この、自動的に描いてしまった線が、いわゆる『既成概念』だ。
 写生をするということは、この既成概念を、突き崩していく作業なのだ。
  
寝ているモデルを横から描くと、モデルの体は横に長く見える。
 自分が場所を移動して、モデルの足元へ行くと、足と腰が手前に見えて、頭は肩に半分隠れるし、頭上に伸ばした腕も手の先しか見えない。
 鏡に映ったモデルは、私の方へ頭を向けているので、鏡を見て、逆方向からも描いてみる。自分が椅子の上に立つと、さらに上からのアングルが加わる。
 このように、同じポーズを続けているひとりのモデルでも、自分が「視点」を変えることで、全く違う形が見えてくる。

 

 最後にとったポーズは時間が長い。30分だ。また、視点を変えて何点か描いてみようと思ったが、時間がなかった。
 1枚の絵を何度も描き直したからだ。
 
 始めに、おおまかな全体像を下描きとして、描く。それから、細部を描いていく。
 天才画家は、始めから直感的に描き下ろしていくのかもしれないが、私のような凡才は、ちゃんと計算したり、計画したりするのだ。
 だが、それが途中でだめだったことがわかる。
 全体の下描きをして、まず足の部分から描いていく。足指が、角度によって面白い形に見えるのを、存分に楽しんで描く。
 胴体をスルーして、頭や腕、肩などを描く。すると、なんだか、バランスがおかしいのに気づく。こんなに頭が大きくはないはずだ。自分の絵を見て、何かが間違っている、と思う。もう一度、全体像を見直してみる。モデルと自分の描いた絵を見比べる。やっぱり、だめだ。せっかく描いたのに…。
 ここで、ちょっとした葛藤がある。自分の間違いを認めて、それまでやっていたことを、やり直すという、勇気。
 でも、間違いは、間違いだ。これを押し通しては、全体のバランスが変だ。そこを許せない私がいる。せっかく描いた腕から上の部分だけれども、思い切ってそれら全部を消して、やり直す。
 
 そんな描き直しを二度して、最後の絵が仕上がった。

      *       *       *

 うっかりして、その日はデッサン会があるのを忘れていた。気がついたら、もう始まる時間になっていた。けれども、行こう、と思った。行ってよかった、と思った。
 

#スペースおいち #デッサン会 #絵を描く #既成概念